削り方
診断で出る削減率は、どれも低めに設定しています。うまくいけばもっと削れますが、経営判断に使う数字を大きく見せても意味がないので。ここでは、その中身を項目ごとに書きます。
見積もっている削減率
| 項目 | 率 | その率にしている理由 |
|---|---|---|
| 事務用品・印刷・郵送 | 55% | 電子化すると、印刷・郵送・保管・ファイル代がまとめて減ります |
| 記帳代行・給与計算 | 45% | 決まった手順で終わる部分を内製化。相場は月5,000〜3万円 |
| 事務・経理の定型作業 | 35% | AI-OCRで入力が消えます。確認と例外処理は人に残ります |
| 複合機・OA機器のリース | 30% | カウンター料金は印刷枚数で決まります(モノクロ約1円/枚) |
| 電話・問い合わせ対応 | 30% | 毎回同じ質問への一次対応だけを自動化します |
| 業務ツール・システム | 28% | SaaSライセンスの約30%が未使用またはほぼ未使用(Productiv調査) |
| 税理士・会計士の顧問料 | 15% | 法人の相場は月3〜5万円。記帳が自社で完結すると契約の前提が変わります |
| 決算料・年末調整 | 10% | 相場は月額顧問料の4〜6か月分。記帳精度が上がると手戻りが減ります |
| 顧問弁護士の顧問料 | 10% | 相場は月3〜5万円。法務は削りすぎると事故るので最低に置いています |
どれも低めに置いています。うまくいけばもっと削れますが、経営判断に使う数字を大きく見せても意味がないので。実際に何をするかは、次の「着手する順番」に書いています。
着手する順番
ツールを導入すれば、その分の費用が新しく発生します。だから入れなくても削れるものから削ります。この順番を逆にすると「ツール代が増えただけ」で終わります。
| 順 | やること | 増える費用 |
|---|---|---|
| 1 | 使っていないサブスクの解約 | 0円 |
| 2 | 年払いへの切り替え | 0円 |
| 3 | 紙・印刷・郵送の削減 | 0〜1万円/月 |
| 4 | 顧問料の契約見直し | 0円 |
| 5 | 請求書・領収書のAI処理 | 3千〜1万円/月 |
| 6 | 複合機・OA機器の見直し | 0円 |
| 7 | 問い合わせの一次対応 | 5千円〜/月 |
1と2だけで、たいていの会社は月2〜5万円下がります。ここまでは追加の費用がかからず、失敗もしません。5から先は、御社の状況を見てから決めます。やらない判断もあります。
法人カードと銀行の引落明細を12か月分いただいて、毎月出ていくものを全部並べます。そのうえで1件ずつ「これは誰が使っていますか」と確認します。前の担当者が契約したまま誰も知らないもの、退職者のアカウントが残っているもの、同じことができるツールが2つあるもの。だいたい出てきます。
残すと決めたものは、年払いに切り替えられないか確認します。多くのサービスは年払いで10〜20%安くなります。ただし途中解約で返金されないので、続けるか怪しいものは月払いのままにします。
まず自社が「送る側」の書類から電子に切り替えます。請求書のPDFメール送付は、相手の同意が要らないことも多く、専用ツールなしで始められます。保管も、すでに使っているGoogle DriveやDropboxで足ります。
契約書の電子化(クラウドサイン等、月1万円前後)は契約が月数件しかないなら入れないほうが安いので、枚数を数えてから判断します。取引先への案内文はこちらで用意します。
顧問契約書と、実際に受けているサービスを突き合わせます。訪問回数、記帳代行の有無、決算料の内訳。使っていないサービスが含まれていないかを確認して、「この業務範囲なら相場はいくら」という1枚を作ります。
先生と話すのは御社です。こちらは同席しません。資料を作るところまでが仕事です。
まず、いま使っている会計ソフトを確認します。freee会計かマネーフォワードをお使いなら、AI-OCRと自動仕訳がすでにプランに含まれています。機能を知らずに使っていない会社がかなり多く、その場合は追加費用ゼロで始められます。
含まれていない場合は、月の処理枚数から選びます。月100枚程度なら従量課金型(1枚50円前後=月5,000円)が最安です。請求書の受け取り口を専用メールに一本化し、取引先ごとの勘定科目ルールを初期設定します。ここが一番手間で、5〜10時間かかります。
切り替えは一気にやりません。1か月は手入力と並走して精度を確かめてからにします。読み取り精度は100%にはならないので、確認する人は必ず残ります。だから削減率を35%に抑えています。
リース契約書の契約期間と更新月を必ず確認します。途中解約には高額な違約金がかかるので、更新月まで動かないのが基本です。「いま解約しましょう」とは言いません。
やることは、カウンター料金の単価確認と、直近12か月の印刷枚数の把握。施策3で印刷が減っていれば、その分がそのまま下がります。更新の3か月前から、台数・機種・プランの見直しと相見積もりに入ります。
正直に言うと、ここは難易度が高く、業種によっては効きません。高齢の患者さんが多いクリニックで電話を自動化すると、逆効果になることがあります。
まず、すでに入っている予約システムがどこまで使われているかを見ます。Webサイトによくある質問を載せるだけで電話が減ることもあり、これは費用がかかりません。診断で出る30%という数字を、そのままお約束はしません。
一番大きい削り代
クリニックでも、たいてい一番大きいのがここです。医薬品や医療材料の仕入れ、リース、外注検査。請求書と領収書の処理は毎月ほぼ同じ手順のくり返しなので、いちばん自動化が効きます。
計算の前提
| 項目 | 置いている前提 | 理由 |
|---|---|---|
| 実人件費 | 額面 × 1.22 | 社会保険料の会社負担分を加算した数字です。 |
| 賞与 | 含めない | 入れれば現状コストは大きく出ますが、その分削減額も大きく見えてしまうので、外しています。 |
| 1人あたりの稼働 | 月 160時間 | この時間で割って時給を出し、削減時間に掛けています。 |
| 定型作業の時間 | 1人あたり月 60h | 人数から自動で仮置きします。実際の時間が分かる場合は、診断画面で直接入力できます。 |
| 電話・問い合わせ | 1人あたり月 20h | 同上。ここも手で直せます。 |
相場の出どころ:税理士顧問料・記帳代行・決算料は税理士業界の公開料金表。人件費の1.22倍は社会保険料の会社負担分。SaaSの未使用率はProductiv調査。医療事務代行の相場は月5〜10万円。
進め方
請求書と契約の一覧を見せていただき、バックオフィスにいくら払っているかを1枚にまとめます。この金額が、あとで「いくら減ったか」を測る基準になります。「思ったより高かった」も「意外と適正だった」も、数字を見ないと分かりません。
削減額が大きい順に手をつけます。設定と移行はこちらでやります。現場にお願いするのは「いつも通りやってみて、使いにくいところを言う」ことだけです。
実際にいくら減ったかを毎月報告します。減っていなければ理由を説明します。続けるかどうかは、その数字を見てから決めてください。
削り方を隠していないのは、手順を知ることと、やり切ることが別だからです。
ツールを比べて選び、契約して、設定して、既存のデータを移して、うまくいかない例外を潰して、現場に説明する。1つの施策で10〜20時間かかります。読んで「なるほど」と思っても、本業の合間にこれをやり切れる会社はほとんどありません。
自分でやれる方は、やってください。そのほうが安く済みます。こちらに頼む場合は、削れた分からしか請求しません。